医学生・研修医の方へ

整形外科医のライフスタイル

整形外科のライフスタイルと言っても、いろいろな生き方があります。
広い診療範囲を網羅する整形外科を選択されると卒後6年で受験資格が得られる専門医になるころまでに、自分の将来のライフスタイルを考えることが出来ます。
このように整形外科医になってからでも希望により、いろいろな選択肢を選ぶことが出来るのも整形外科の特徴の1つです。日本整形外科学会はいろいろなライフスタイルを選ばれたすべての会員に対して多方面のサポートを続けています。

ここでは、整形外科医を目指す研修医・学生の方に参考になればと考え、あくまでも一つの例として、整形外科のライフスタイルを示します。

1. 整形外科研修以前

整形外科とは、骨・軟骨・筋・靭帯・神経などから構成される運動期間の疾患・外傷を対象とし、その病態解明と治療を行う専門分野です。
眼・耳鼻・頭蓋内・胸腔内・腹腔内・泌尿生殖器・皮膚を除いた部分となり、具体的には脊椎・脊髄・上肢・下肢・骨盤など広い部分が対象となります。

健康増進習慣の広まりや社会の高齢化などの変化に伴い、骨・関節・脊椎における外傷やスポーツ疾患、変性疾患は増加傾向にあります。
初期研修の2年間にも整形外科に関連する外傷の診断・治療が必須のものとして上がっていることからも整形外科の重要性がわかると思います。

2.後期研修としての整形外科研修

卒後3年目以降の整形外科後期臨床研修プログラムでは、これらの整形外科疾患に適切に対応できる基本的な知識と、診断・治療技術を習得し、4年間の整形外科研修の後に「整形外科専門医」取得を目標としています。
さらに、明らかにされていない病態解明や新しい治療法・治療器具の開発に将来取り組むことのできる知識とアプローチ手法を学び、将来の医学・医療を牽引するような人材を育てることも、大きな目標としています。

整形外科診療の中でいくつかのサブスペシャリティーがあります。脊椎・関節・スポーツ疾患・手の外科・骨軟部腫瘍・関節リウマチ・外傷など多岐にわたります。整形外科研修の間にこれらの症例を経験し、次第に自分で治療を行うようになってきます。
そのためには、整形外科全般について一定のレベルになるまでは(一般的には整形外科研修を始めて2〜3年間)総合的な整形外科研修を行うのが一般的です。骨折・脱臼などの外傷に関しては、整形外科の基本と言えますからこの期間に積極的に症例を治療するようにして、外傷治療を習得してもらいます。

整形外科全般について一定のレベルに達したと判断された場合には、整形外科の中の専門性(脊椎・肩関節・股関節・肘関節・手・関節リウマチ・膝関節・骨軟部腫瘍など)のある分野について、さらに深く研修するのがよいでしょう。
この場合も、整形外科専門医になる前の段階ですので(整形外科研修を始めて3〜4年目にあたります)ひとつの専門だけを研修するというのではなく、他の分野についても一定の研修は続けます。

このように考えてくると、整形外科の研修を一つの病院で行うのは無理があると思われます。多くの指導者に接するということも病院を変わる利点になりますし、それぞれの病院に勤務して、それぞれの指導者について、得意な分野を研修することでいろいろな分野についてエキスパートとなっていくわけです。
いくつかの施設や指導者を効率よく回るためにはアクティブに人事交替のあるグループに入って研修することが実際的と思われます。以前にはこれを「医局」が行っていたと思いますし、現在も名前を変えてより良い研修が行えるように工夫しているグループあるいは医局が多数存在しています。

3.病院での立場

総合的な整形外科研修期間は整形外科研修開始から2〜3年間が一般的です。この期間は整形外科病棟で入院患者を主治医として担当し、担当患者の手術については、助手として参加し、整形外科手術治療の流れをつかみます。
前述のように整形外科の中で多くの分野がありますので、これらの分野を順に担当して、整形外科全般にわたって知識・考え方・治療プランなどを自分の物としていってもらいます。習熟の程度と手術の難易度によって、実際の術者として手術に参加してもらうこともあります。指導は主に入院指示者である術者が行います。

この最初の2〜3年間に整形外科医の基礎が確立するように、一人でも多くの患者を受け持ち、1例でも多くの治療に参加するという態度で研修を行っていただけると、かなりレベルの高い一人前の整形外科医への道が開けます。

整形外科外傷については、指導医の元で診断・治療を一貫して行います。6ヶ月から1年間くらい病棟主治医を経験した後に、外来診療も行います。もちろんこの時点で外来患者の治療方針を決定できるとは思いませんが、経験しながら、勉強と指導によって外来診療をこなしていくことも診断能力を上げるために必要かと思います。

リハビリテーション医療のかなりの部分に整形外科治療が関係しています。リハビリテーションに関しても研修の希望がある場合には、調整するのがよいでしょう。一時期リハビリテーション医療を行うことは、将来整形外科医として活躍するために役に立つことと思います。

4.研究について

医療は行った治療の是非を評価して将来につながるようにする事が大切です。この意味で、研修期間中に経験した症例を研究会で報告したり、一定の治療法の成績を検討して学会に報告したりと言う「臨床研究」には積極的に参加することがよいでしょう。
整形外科が次第に分かってくると、大きな学会での発表も任されるようになります。

臨床研究を行っているうちに、基礎的な研究に興味が出てくる人もあります。この場合には、それぞれのタイミングで大学のスタッフに相談して、基礎的研究が可能な道を探ることになります。整形外科学講座の中で研究を行う場合もあるでしょうし、医学部の基礎あるいは理学部などに出向して研究を行う場合もあると思います。
大学によって異なりますが、この時期に大学院に入学して研究を行う場合と、市中病院で整形外科臨床をしながら研究グループに参加して行う場合があると思います。

5.整形外科専門医取得

日本整形外科学会認定整形外科専門医は、日本整形外科学会会員となり日本整形外科学会の認定施設で臨床研修6年完了後、受験資格が得られます。
ただし、卒後初期研修期間2年間は日本整形外科学会に入会していなくても必要研修期間として申請することができます。したがって、初期研修終了後、後期研修プログラムに参加し、同時に日本整形外科学会に入会すれば、4年後には整形外科専門医の受験資格が得られます。
従って、研修施設は日本整形外科学会の認定施設であれば、専門医取得に必要な臨床症例教育、論文・学会研究発表の指導を行っていると思います。

6.整形外科専門医取得後の生涯研修

後期研修終了後、引き続き各人の希望の元に、1)大学院研究コース(医学博士号取得)、2)サブスペシャリティー専門研修(脊椎外科、関節外科、スポーツ整形外科などの専門性の高い領域での研修)、3)地域医療コース(関連病院、開業などで一般整形外科診療の継続)などが考えられます。

1) 大学院で研究
大学院で研究を行う場合は「何を研究したいか」が明確であることが必要でしょう。
「博士号」を取るために大学院へ入学するわけではないでしょう。実際に患者を診療していると「治せないこと」が多いことに驚きますが、これを一つ一つ解決していくには「臨床研究」と「基礎研究」が必要になります。
日本の整形外科が世界的にもリーダーシップをとって行けるのはこの研究の両輪があるからです。この両輪のうちの「基礎研究」を良い環境で行えるのが「大学院」ということになります。大学院を卒業してからは、臨床医に戻る場合と、基礎研究を続ける場合があります。これは本人の興味の問題であると考えられます。
2) サブスペシャリティーを極める
整形外科の中のサブスペシャリティーをもっと深く研修する人たちがいます。
専門医を取得していますので多くの疾患の治療は一応行えるわけですが、実はそこが出発点です。関節外科、腫瘍、脊椎外科、手の外科などをここから研修・研究していくことによって、より高レベルの専門性を持つことができるようになります。
この道に進んだ場合は後輩を指導する責務も負うことになります。
3) 地域医療を極める
たとえば「関節専門の整形外科医」が偉いわけではありません。
よくある外傷や疾患をきっちりと治療するためには専門医取得後も研修や研究を継続していく必要があります。地域の総合病院や救急病院あるいは地域の診療所で多くの患者さんが整形外科の治療を受けています。これらの患者さんをきっちりと治していくのが地域医療です。
こちらに進んだ場合も、後輩の指導はもちろんしていかねばなりません。