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骨・軟部腫瘍相談コーナー

腹腔外発生デスモイド型線維腫症診療アルゴリズムについて

 デスモイド型線維腫症は、WHO腫瘍分類では局所浸潤性は強いが遠隔転移をしない線維芽細胞増殖性の軟部腫瘍で中間型に分類される。年間100万人中2-4人に発症する希少疾患であり(1)、腹腔内と腹腔外に発生し、腹腔外腫瘍の多くはβカテニン遺伝子の変異が発症原因とされ、腹壁、肩甲帯、臀部、四肢に好発する。
 病理診断が必須であり、低悪性度軟部腫瘍との鑑別に注意を要するため、針生検で診断が不十分と考えられるときは切開生検を行うべきである。
 広範切除による手術が治療の第一選択と考えられてきたが、術後の極めて高い再発率(20-70%)から、慎重な経過観察(wait & see)や薬物治療(NSAID、抗女性ホルモン薬、抗がん剤、分子標的治療薬)や放射線治療など、手術以外の治療法の有効性が報告され、選択されるようになってきている(2)。
 患者の年齢・性別、腫瘍の発生部位・増大傾向にあるか、などの要因を患者ごとに総合的に評価して、ADL、QOLを最大限に維持、改善できる適切な治療法を選択する。
 したがってデスモイド型線維腫症に対する診療は定式化して“正解”を得ることが困難な場合があり、厳密な意味での診療“アルゴリズム”にはなっていない 。換言すれば、本アルゴリズムに基づいて、専門的集学的医療チームにより患者と相談して適切な判断のもとで診療手順を決定する必要がある。

(1)Reitamo JJ Häyry P Nykyri E, et al. The desmoid tumor. I. Incidence, sex-, age- and anatomical distribution in the Finnish population. Am J Clin Pathol. 1982 Jun; 77(6):665–73.

(2)Gronchi A, Colombo C, Le Péchoux C, et al. Sporadic desmoid-type fibromatosis: a stepwise approach to a non-metastasising neoplasm--a position paper from the Italian and the French Sarcoma Group. Ann Oncol. 2014 Mar;25(3):578-83.