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COVID-19感染の潜伏期間中に手術を受けた患者の臨床的特徴と転帰ー中国武漢からの報告

COVID-19感染の潜伏期間中に手術を受けた患者の臨床的特徴と転帰ー中国武漢からの報告

Clinical characteristics and outcomes of patients undergoing surgeries during the incubation period of COVID-19 infection

Shaoqing Lei, Fang Jiang, Wating Su, Chang Chen, Jingli Che, Wei Mei, Li-Ying Zhan, Yifan Jia, Liangqing Zhang, Danyong Liu, Zhong-Yuan Xia

EClinicalMedicine 2020
Open AccessPublished:April 04, 2020DOI:
https://doi.org/10.1016/j.eclinm.2020.100331

[要約]

背景
中国の武漢での2019年の新規コロナウイルス病(COVID-19)の発生は、世界中で急速に広がっている。 感染拡大初期の段階で、COVID-19の潜伏期間中と認識せずに待機的手術が行われた有意義な症例を少数ではあるが経験した。それらの臨床的特徴と転帰について報告する。

方法
2020年1月1日から2月5日まで、武漢のRenmin Hospital, Zhongnan Hospital, Tongji Hospital, Central HospitalでCOVID-19の潜伏期間中に待機的手術を受けた34人の患者の臨床データを後ろ向きに分析した。

調査結果
34人の手術患者のうち、年齢の中央値は55歳(IQR [interquartile range]、43-63)で、20人(58.8%)の患者は女性であった。 すべての患者は、手術直後にCOVID-19肺炎を発症し、胸部CTで異常所見を認めた。一般的な症状には、発熱(31人 [91.2%])、倦怠感(25人 [73.5%])、乾性咳嗽(18 人[52.9%])が含まれていた。15人(44.1%)の患者は肺炎の重症化に伴い集中治療室(ICU)への入室を必要とし、7人の患者(20・5%)はICUへの入室後に死亡した。ICU入室に至らなかった患者と比較して、ICU入室を要した患者は高齢であり、基礎疾患の併存症を有する可能性が高く、より大きな手術を受け、さらに重度の検査異常(白血球増加症、リンパ球減少症など)を呈していた。非生存者で最も一般的な合併症は、ARDS、ショック、不整脈、急性心機能障害であった。

解釈
COVID-19が確認された手術患者34人を対象としたこの後ろ向きコホート研究では、15人(44.1%)の患者がICUでの治療を必要とし、死亡率は20.5%であった。

[解説]

本論文の患者には頚椎前方除圧術、人工股関節手術などの整形外科手術例も含まれている。手術侵襲がCOVID-19感染者の予後不良因子ということも知られており、待機的手術は慎重に行う必要があると考えられる。特に感染拡大地域で待機的手術を行う際には、術前にPCR検査や低線量胸部CTによるスクリーニングを行う、あるいは術前14日以上の厳重な検疫期間を設けるなどの対策が必要かもしれない。

(文責 慶應義塾大学 整形外科 大矢昭仁)