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「軟部腫瘍(四肢や躯幹に発生した“はれもの”“できもの”)

全身の症状

頻度

よくみられる非腫瘍性の腫瘤としては、ガングリオン、類表皮嚢胞(粉瘤)や滑液包炎があり、また、腫瘍性の腫瘤としては脂肪腫や血管腫などがあります。いずれも良性の疾患です。

原因と病態

1) ガングリオン

ガングリオンは手関節の背側に発生する小指大の辺縁平滑な硬い腫瘤がほとんどです。
内部にゼリー様の液体が貯留しています。

2) 類表皮嚢胞

類表皮嚢胞は新陳代謝によって表皮から剥がれ落ちる垢などの老廃物が皮膚や皮下に溜まる嚢胞性病変です。感染すると傷はなかなか閉鎖しません。

類表皮嚢胞 MRI: 右大腿外側の皮下腫瘤で、類表皮嚢胞です。

3) 滑液包炎

滑液包炎は主に膝関節の内側、前方や肘関節の後方に発生する腫瘤で可動時に若干の疼痛があり、これらは超音波で液体が確認されます。原因は刺激が加わり滑液包に液体が貯留します。

4) 脂肪腫

脂肪腫は軟らかい皮下にみられる腫瘍が大部分ですが、中には比較的硬い筋肉内の脂肪腫もあります。大きなものは高分化脂肪肉腫(低悪性)のこともあり、区別が必要です。

脂肪腫 右大腿外側の巨大な軟部腫瘍(高分化脂肪肉腫)です。

5) 疼痛のある腫瘍

疼痛のある腫瘍は血管系・神経系の良性腫瘍です。

神経系腫瘍 MRI: 筋間に発生した良性の神経系腫瘍で、針生検で強い痛みがみられた。
神経鞘腫 神経鞘腫は表面平滑な腫瘍で、被膜を切開して神経線維を残し、腫瘍部分のみを摘出(核出術)します。

6) 皮下にできる腫瘤

皮下にできる腫瘤で、可動性がみられても硬い腫瘤は注意が必要で、3cm以上のものは局所麻酔で針生検をする必要があります。ただし、針生検の後は20分間ほどの安静が必要です。
後に出血がみられることがあり、もし、悪性であれば広がってしまうことになります。

7) 軟部腫瘍

軟部腫瘍は悪性でも疼痛がありません。一般の方は痛みがないから、大きくなるまで放置していたという方がよくみられます。
これは大きな間違えで、軟部は悪性でも痛みがないのが普通です。

平滑筋肉腫 MRI: 右股関節外側の皮下腫瘍で、平滑筋肉腫(悪性)です。疼痛はありません。

8) 高悪性軟部腫瘍

経過が比較的長い腫瘍の中にも高悪性軟部腫瘍があります。
疼痛のある腫瘍は血管系・神経系腫瘍の良性腫瘍で、感染症(潰瘍)に類似する隆起性皮膚線維肉腫、横紋筋肉腫、類上皮肉腫などの悪性腫瘍もあります。

診断

臨床所見、CT,MRIなどの画像所見、組織所見の3所見を合わせて診断します。

脂肪系腫瘍ではCTやMRI検査を行います。脂肪抑制の造影MRIで、染まれば高分化脂肪肉腫が考えられます。
MRIではガングリオン、粘液性腫瘍、類表皮嚢胞などは比較的容易に解ります。
定型的な画像でない腫瘍には粘液性悪性腫瘍(粘液性脂肪肉腫、粘液性線維肉腫など)が多くみられます。

MRI:大腿の遠位の筋肉内に大きな脂肪性腫瘍がみられます(高分化脂肪肉腫)

組織所見

定型的なもの以外は生検を行います。針生検は、局所麻酔で神経や血管を傷つけないよう注意して、14ゲージの穿刺針で組織を採取しますが、深い部分では超音波やCTガイド下で針と腫瘍の位置を確認しながら採取します。局所麻酔で激しい疼痛がみられれば中止し、神経の腫瘍が考えられます。

採取した部分が壊死のこともあり、診断がはっきりしなければ、手術で腫瘍を露出して1×1×1cmほどの組織を採取する切開生検を行います。

治療

良性の境界明瞭な皮下腫瘍であっても、手術室で止血帯を用いて、神経を損傷しないように行っています。切除に時間のかかる大きな腫瘍は、入院させて行います。

悪性の腫瘍は、全身麻酔や腰椎麻酔をかけ、腫瘍の辺縁より3cm以上離して筋肉や神経・血管を含めて、ときには腫瘍が接している骨や関節も切除しますので、そのままにしておくと術後筋力低下、神経障害、血管障害が出現します。
欠損部を補うために、骨移植、人工関節置換術、神経移植,血管移植、筋・皮弁移植などの組織移植が行われます。

悪性度の高い腫瘍は術前に抗腫瘍剤を投与し、腫瘍を小さくして手術を行います。
また、術前に抗腫瘍剤(抗がん剤)が有効であれば、術後も追加します。この抗がん剤治療を行うことで、成績は大きく変わってきています。

来院時にすでに肺転移がみられる場合には、腫瘍および肺転移がほとんど消失するまで化学療法を繰り返してから、広範切除を行います。

うっかり切除

患者さんの希望で可動性のある腫瘍や隆起性の腫瘍はうっかり切除され、後で問題になることがあります。病理診断で、紡錘形腫瘍などの結果がでた場合はすぐに専門家に紹介してもらわなければなりません。

切除後に悪性が疑われた場合、再発するまで待ってはいけません。初回の手術創の周りを大きく切除する追加切除が必要になります。
症例によっては追加切除の前に化学療法や放射線療法も必要になります。
再発を待たずに治療すれば術後成績に大きな差はないとされています。

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