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保護者・養護教諭・学校医向けFAQ
運動器検診の対象は?
――保健調査票でチェックのあった児童のみ、内科検診の時にみてもらう形で実施しました。本当にこれで十分なのでしょうか?

本当は全員を対象にしたいところですが…
運動器の専門家である整形外科医が、全員を検診する体制が望ましいでしょう。
ただ、学校現場における時間的な制約や、運動器の専門でない学校医が検診されるという現状から、保健調査票でチェックのあった児童生徒(保護者ならびに学校における養護教諭や保健体育教諭などによる観察で異常が疑われる児童生徒)および、内科検診において入室時の状態などから学校医が異常を疑った児童生徒を対象にしていると理解しています。保護者が保健調査票を直接記入することで、“運動器の大切さ”を認識していただく良い機会にもなると考えます。
一方、私たち整形外科医が日常の診療でよく経験することなのですが、運動器の外傷や障害は命にかかわることが稀なだけに軽視されがちです。あるいは、からだに異常がある旨を伝えると運動を続けられなくなるとの思い(運動部に属している子どもの場合、レギュラーから降ろされるとか、他のメンバーに迷惑が掛かる等々)から虚偽の申告がなされる恐れがあります。それによって、見逃しが出ないかという心配が拭えません。
保護者をはじめ関係者に「運動器の大切さ」と「運動器検診の意義」を十分に啓発し、「小さな異常を放置すれば重大な障害になる場合もある」と伝えることが重要です。たとえば、腰を反らすと痛いがスポーツを続けることが出来るため放置していた、あるいは、痛いときは接骨院やマッサージに通っていたところ、腰椎疲労骨折(腰椎分離症)が進行して、骨癒合が望めない状態にまでなった(資料1)、肘を伸ばし難いが投球はできるため野球を続けていたら、肘OCD(離断性骨軟骨炎)が進行してしまった(資料2)、手術が必要になるまでに疲労骨折が進行してしまっていた(資料3)などの例があります。このような事態になる場合もあることを説明して、正しい記載を促していただきたいと思います。
資料 1 腰椎疲労骨折(分離症)( 16歳 男子)
・高校3年生
・サッカーをしている
・中学3年生の頃から腰痛が慢性的にあったが、いつも接骨院や整体に
行っていた
・最近1カ月で、痛みが増強し、前屈したり立ち座りが苦痛である
・整形外科を受診した時には、既に骨癒合が望めない状態にまで進行
していた
資料 2 野球肘 (12歳 男子)
・外側の障害と内側の障害を併せて
生じている
・こんな状態になるまで、野球を
続けていた
・左側(健常側)と比較すると良く分かる
資料 3 野球肘 (16歳 男子)
・後方型の野球肘(肘頭疲労骨折)
・手術が必要になるまで、放置されていた
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